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おっかしいよなぁ。どう見ても大学生に見えるやつ、一人しかいないぜ。
『現役女子大生との合コン』という触れ込みに抵抗なく釣られて参加してみたはいいが、どうにも詐欺に遭った気がしてならない。いやそりゃあ確かに参加者全員が女子大生とは言っていないから、一人でもいるなら嘘ではないが。その一人も本当に学生か疑わしいわけで。
 学生御用達と思しき賑わい方をするファミレスが会場ということもあって、落ち着いた雰囲気というやつには期待していなかったが、今後の展開まで不安になってきた。そもそも誰一人知った顔ではないというのが、微妙な空気の原因かもしれないが。集まった理由もなんやかんやであり、そこらへんは有耶無耶となっていた。俺を含む男たちはそういう空気を察してか、へらへらと笑って、なんとも微妙な表情になっている。
 女子の方は確かにレベルは高い。だが看板に偽りありというやつじゃなかろうか。
「湯女りんです。よろぴー」
 和服を着た女が大して面白くもなさそうなのにニヤニヤと笑いながら、ピースマークを作る。なんで浴衣なんだろう。そういう視線を察してか「趣味ですわ」と袖を摘んで言ってきた。
 髪も真っ黒で伸ばして、和風美人ではある。でも女子大生って雰囲気じゃない。
「藤和女々でーす。二十歳ぐらいでーす」
 ぐらい? 藍色の長髪のめだつ女性が無邪気に自己紹介する。自分でそう紹介はしても、二十歳の雰囲気じゃない。なにかが違う。見た目は若々しい。かわいいっちゃかわいい。だが第六感的なものが危険信号を発していた。偽物を掴まされそうな気がしてならない。
 それと目立たなかったが、僕の二つ右に座る女の子が噴き出したのを見逃してはいない。
「親戚からは女々たんって呼ばれてますー」
「たん?」
 自称女々たんの隣に座るやつが、微笑みながら窺う。これに動じないとは、やるなぁあいつ。上下青いスーツを着た金髪のニーチャンで、物腰柔らかそうだ。髪もふわふわだし。ただ、どうにも胡散臭い。善良さとか人当たりの良さを露出しすぎて、警戒が先走る。
「ほら私、愛され女々たんなもので」
「ははぁなるほど」
 なにがなるほど? どう納得したのか、青スーツが肩を揺する。
 それと青色がもう一人いる。こっちは安物の青色のシャツを着たやつで、隅の席に座って、「おかしいなぁ」とずっと首を傾げている。時々女の子たちの顔を順々に確かめては、「あれあれ」とか困惑している。なにか予定と違ったことがあるのかもしれない。そんな隣を無視して、三人目の女性が口を開く。
「鹿川遊里です。今日は遠いところからやってきました、どうもー」
 さっき噴き出していた女の子がにこやかに名乗る。顔より胸もとの目立つスタイルの良い子だ。今度はたんとか、りんが後ろにくっつかない。マトモだなぁと思っていたら目があって、にこりと微笑まれる。そんな思わせぶりな仕草をされたら、普段なら気があるかもと舞い上がってしまうが、こと今回に関しては目の奥まで覗かれているような気がして、少し寒気がした。
 人にない、不思議なものを感じさせる子だ。青スーツとは別の方向で警戒してしまう。
 で、最後に名乗ったのは僕の隣に座る女の子。こいつが一番若そうに見える。
「……米原麻衣。同じく、遠くから」
 この面子で唯一、女子大生でも違和感のない美少女。顔が幼いので女子高生かもしれない。際立った特徴としては腕がない。右腕が存在していないらしく、服の袖がぶらぶらと店の冷房に揺らされている。……うーむ。みんなあまり突っ込んでいないが、結構すごくないかそれ。
だがこの中では一番テンションが普通だ。愛想こそないが、彼女からは常識人の雰囲気がある。女々たんとか湯女りんとか名乗らなかっただけでそういう評価なのもどうなんだ。

 鹿川ちゃんと隣同士に座っているのは「友達だからですよー」と答えてくれた。

 直後に米原麻衣……言いづらいな、マイマイちゃんは「違う」と否定したけど。
 まぁつもり、友達なんだろう。
 しかしそれはいいとしても、マイマイちゃんからは剣呑な気配も感じる。
 言ってしまえば同業者の匂いがするんだよなぁ、こいつ。
 お互いにそれを察してか、ピリピリした空気を感じて仕方ない。合コンなのに。
「木曽川でーす、よろぴー」
 自己紹介の順番が回ってきたので、パクった。いぇーいとやる気なくピースマークを作ったら、湯女りんが「きゃーきゃー」と棒読みで応えてくれた。干上がった地面のように乾いてはいるが、ノリはいいようだ。異性云々ではなく気に入った。いい友達になれそうだ。
「新城です。陶芸やってます、よろしく」