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サイン会も今年で七回目となった。正確には海外で一度、サイン会を行っているので計八回になるのだろうか。秋葉原で五回、幕張で二回となる。ちなみに幕張で宿泊するホテルには大浴場があり、一日に四回は入りに行く。しかし千葉は遠い。それだけが辛い。
話を戻す。今年はSさんという編集者に連れられてサイン会の会場へと向かう手はずになっていた。しかし時間になって電話してもSさんが出ない。やむなく別の担当編集者に連絡を取って迎えに来てもらう。そのSさんとは、エスカレーターですれ違うこととなった。
 Sさんは熟練した魔法使いの如きお髭を持つ落ち着いた方で、ベギラマかエクスプロージョンぐらいは唱えられそうだった。恐らく以前にも編集部で顔を見たことはあったのだが、正式に挨拶したのはこれが初めてだと思う。なんだかんだと合流して、控え室へ向かった。
 案内された控え室では時雨沢さんにお目にかかった。ある種、サイン会に来る度のお約束ではと思うほど遭遇率が高い。三年前は短かった髪がまた長くなっていた。ご健勝のようでなによりである。
 その後、作家とイラストレーターがいっぱいいる控え室に入るのはなんとなく敬遠してスタッフ用の椅子に座っているとのんさんがやってきた。一年ぶりだったので最初、入ってきた女性をのんさんと認識できなかった。お久しぶりですと言われて、「あぁどうもどうも」と丁寧に頭を下げていたが、はて、どちら様だったかとずっと考えていたのだった。
 そうしてSさんに案内されて、会場である書泉ブックタワーへと向かう。ベルサーレかベルサーヌからは案外と遠かった。でも空が見飽きないので、苦にはならなかった。
 空は雲のある方が好きだ。雲一つない真っ青な空よりも奥行きを感じていい。
 特に夜に見上げる雲は格別なものがある。
 それはいいとして書泉ブックタワーに入る。本屋に来るのは、今年はこれが初めてだった。屋内は静かで、空気が冷えたものとして感じられる。本屋に来たなぁという感じだった。もっとも他の客からすれば、浴衣の変なやつが来たなぁという感じだっただろう。
 そのままスーツを着た方々に控え室まで案内される。控え室は8階にあり、壁がガラス張りとなっていたので下の景色が広く覗けた。そして存外に広く、それが後に一つの恥を生む。
 控え室では、のんさんはこの後、自撮り棒を買いに行くと話していた。
 私はそれを横から聞いていて、地鶏棒って美味そうだと思っていた。
 秋葉原の名物かと勘違いしたのである。
 五秒後、非常に恥ずかしい思いをした。
 ていうか自撮り棒なんてあるのここで初めて知ったよ。なにそれ、文化が違う。
 あと、控え室からのんさんとSさんがいなくなった途端、私は嬉々として立ち上がり回し蹴りを放った。「キエー」とか「チェストー」とか「愛がアップ!」と独り盛り上がっていた。
 このことで肝を冷やすのだが、それはまた後のお話。
 それからなんやかんやがあって時間となり、用意された会場へと向かった。小さいながらも壇上に上がってサイン会を行うのは久しぶりだった。どれくらいお久しぶりかというと、初めてのサイン会のとき以来である。あのときは左さんと一緒だった。当時は私の髪もまだ短く、若かった。多分若かった。未知の探求に限りない興味を持つぐらい若かった。
 まず、私から簡単に挨拶することになった。これも最初のサイン会以来だ。当時は以下略。
 実は挨拶するというのは事前の打ち合わせで聞いていたのだが、控え室では上のようなことをやっているアホだったので考えるのを忘れていた。仕方なく無難な内容にした。その後、のんさんが『安達としまむら』の宣伝をしていたので、俺もこれを言えば良かったと後悔した。
 そんなこんなでサイン会が始まる。いつもそうなのだが、立ち上がりは静かなものである。私はする側なうえに神経が雑なところもあるので分かったふりが限界ではあるが、恐らく緊張しているのだろう。もしくは初めて見る作者がアレだったのでガッカリしていたのかもしれない。余談ではあるが私は時々、女性作家なのですか? という質問を頂くことがある。作風か、文章か。どのへんにそうしたものを感じるのかは正直興味のあるところである。
 そんな主に髪の長さが美少女であるところの私に、三人に一人ぐらいの割合で握手を求めてくるのだが、これがまた一様に淡い。触れるか触れないか、ぎりぎりのところでそっと触ってくるだけなのである。なぜだ、俺の手がでかいからか。安心してほしいのだが、見た目に反して非力マンなので痛くないぞ。
 関係ないけど、『鉄血のオルフェンズ』で握手しましょうって手を差し出したお嬢様の表情がかわいかったと思う。先週、ぼけーっと見ていたのですがやっぱりロボットアニメはいいですね。
 そんなことはさておいて、今年は例年にない量の差し入れを頂いてしまいました。去年の倍ほど頂いてしまって、困惑しながらも感謝することしきりです。頂いたお菓子はまずのし梅を頂きました。次はりんご餅とハロウィンのお菓子を食べている最中です。もはやただのおやつ食べるおじさんとなりました。
 また、頂いた手紙は便箋がリラックマだったり、リラックマのシールが貼ってあったりと大半がリラックマだった。いいよねリラックマ。ありがとうございます。一番くじのリラックマのぬいぐるみやカレンダーを譲って下さった方までいて、リラックマ尽くしでございました。でもすみっコぐらしもいいですね。他にも自作のCDや自作の人形、かんざし等々でおやつ食べるおじさんに文化的なものを与えてくださって、いやーバランス取れました。ありがとう。
 サイン会は去年も当選して今年も、という方が何人かいらっしゃっていましたが、『去年も同じこと言ってましたね』とまったく成長していないことを指摘されました。ぐへぁですね。まぁ成長してないならまだいいけど、後退していると困るよねぇ。困る。三井くんという名前を見る度にスリーポイントシュートが上手いか聞くのはこれから自重しようと思いました。
 あと最初は喋りまくっていたけどさすがに後半は喋ることが少なくなってきて、『なにか喋ってください』と無茶ぶりを始めていました、この場を借りてごめんなさいしておきます。
 サイン会は盛況の内に終了した。と思う。のんさんはサイン色紙に安達かしまむらの絵を描いていた。来年は私もなにか練習しておこうかなぁと少し思った。あと、終わった後にリラックマ描いてくださいと頼んでみたらまったく知らないクマを描いてくれた。