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「これはまた、どちらも派手だねぇ」
 ふむふむと博士が私の腹部に顔を寄せて、愉快そうに眺めている。勿論、こっちは愉快じゃない。視線もそうだし、自身の肉体の変貌だって許容しがたかった。
 私の横に立つチョコも髪の色の変貌を先程笑われたばかりだ。今は町長がその髪に入り込んだ砂を払っている。チョコは無表情にされるままだった。
「ほんとねえ。夜にそのへん歩いていたらアクアリウムみたいでいいわねえ。人間水族館だわ」
 町長がニコニコしながら好き放題言ってくれる。この人はこの人で真っ白で、夜に見かけたら目立ちそうなものだった。チョコの髪の砂を払い落とした後、私の肩を叩いてきた。
「でも助かったわ。あなたが撃退してくれたお陰で町は無事だった」
「はあ……」
 倉庫の外には、私が運んできた黒い機体が横たわっている。カァールディスで担いで運ぶ最中も再起動しないかと不安だったけど、今のところは大人しくしていた。普通、コクピットが無人で動くことはないのだ。それでもなにかありそうな怪しい機体なのは……お互いさまか。
 ちなみにカァールディスは外で現在、掃除中だった。町の人たちが町長に頼まれて砂取りしている。生活用水が貴重なので水洗いはして貰えない。大人しく座り込んで掃除されている様を見ると、本当に大きな鳥のようだった。装甲も大分剥がれて、無理をさせたなぁと思う。
「きみの侵食具合は……うむ……大丈夫のようだな」
 間を作った上に一言小さな反応を挟むせいで、信憑性が薄い。
「本当ですか?」
「マジマジ」
 博士は軽い調子で認めてさっさと倉庫の外に歩いていってしまう。私よりも外の黒いロボットを確かめたくて仕方ないといった風情で、先程から身体が左右に忙しなく動いていた。町長も興味があるらしく、一緒に出ていく。その大人たちの後ろ姿に、溜息を吐く。
 チョコは一休みするように倉庫の隅に座り込んでいた。
 チョコの場合、立っていても変わらないような……ああでも、関節とかを休ませたりする意味が……あるのかな?
「疲れた?」
「各部の稼働効率が減衰しています。時間を置く必要があると判断しました」
「あ、そ」
 疲れたと言っているらしい。小難しいやつだなあと、ちょっと笑ってしまった。
 外に出てみると博士と町長が、黒い機体を直接触りながら観察していた。
「コクピットには誰も乗っていなかったか。ふむ、予想したとおりだな」
「正確には青色の液体でいっぱいだったのよね?」
 町長が首を伸ばして、ロボットを挟んだ位置に立つ私に尋ねる。
「はあ」
「なるほどねえ」
「そうなるよねぇ」
 いつもながら思わせぶりな二人だった。時々、分かったふりしてないか? と疑いそうになる。
「修理して使えそう?」
「無理だな。この世界には三十年早い」
「あなたなら?」
「二年と四ヶ月といったところか。ただそれまで私が生きているか微妙だな」
 なんの話をしているのだろう。いまいち掴みきれないけどとりあえず、そこのじーさんが二年やそこらで亡くなるようには到底思えなかった。
「だがこの機体のパーツを拝借すればカァールディスの修理も進められる。色は気に入らんが後で塗り直せばいいか。……しかし、愉快だ。私がいなくとも時間さえあればここまで辿り着けるわけか。」
「といっても人類にはその時間がないのよね」
「いやあそりゃどうにもならんね」
 はっはっは、と追いやられた人類を笑い飛ばす二人。……人類滅亡か。