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 こいつみたいな格好をしたやつがもう一人? ははは、まさか。
 地球を誤解している自称宇宙人などそうそういまい。
「はーいケーキー」
 女々さんがこたつ机の上に置いた箱を勢いよく開く。
 まだ夕飯前なのに、開いちゃっていいのだろうか。
 中身はホワイトクリームとクリスマスの装飾が目立つ無難なケーキだった。ツリーやトナカイ、それに鈴が賑やかにケーキの上に飾られている。あと、エリオちゅっちゅとチョコ板の上にクリームで書かれていたが見なかったことにした。
「これはなんだ? おっと、 コ レ ハ ナ ン ダ」
 なぜか言い直したヤシロが、ケーキの上に乗るサンタクロースを模した砂糖細工に手を伸ばす。が、先にひょいっと女々さんがサンタをつまみ上げる。
「ム」
「ダメよー。サンタは女々たんが食べるのー」
 張り合うな。しかも結構本気に奪い合っている。そのうち、指の熱でサンタが溶けそうだ。
 災難だなぁサンタ。ぼんやり眺めていると、エリオがこっちに寄ってくる。
 今度は俺の側にちょこんと座った。その目が黒猫を捉えていることに気づく。
 そういやぁ、まだ言ってなかった。
「ありがとな」
 猫とエリオの頭を撫でる。くすぐったそうにしているのはどっちも一緒だった。
「お礼は……あー、明日でいいか? なんか買ってくる」
「ん。エリオさんはイトコみたいに子供じゃないから、クリスマスに貰わなくてもいいぞー」
「はいはい」
 エリオさんに女々たんにヤシロさま。面倒くさいな、この人たち。
「でもエリオさん今年一年がんばったで賞は受け取る」
「がんばったがんばった」
 勝手に賞を作っているのはさておき、無難に褒める。いつも褒め方が同じようなものになっていることに、エリオはいつ気づくのだろう。本人は今のところ満足そうなので、あと一、二ヶ月は効果を発揮するだろう。
 そうして得意顔している間にも、その水色の髪からは柔らかく粒子が舞い散っている。
 今年はまだ初雪を見かけていないが、目の前に降るものはまさに、水色の雪だった。
「……ふぅん」
「ん、どーした」
「いや、なに」
 エリオの髪を掬う。髪の先端と共にふわりと舞い上がるそれを、眩しく感じながら。
「こういう、水色の粒子を出すことのできる機械って面白いかもなぁと思って」
 原理も分からんし、その正体もさっぱり掴めんが。
 これの秘密を解き明かすことを一生の目標にするのも悪くないかもしれない。
 いつかこの神秘に一歩でも近寄れたら、と少しだけ思った。

 その3

「石竜子くん、やっほー。カモカモサンタがクリスマスプレゼント貰いにきたよー」
「ぎゃー」
 今年の締めはサンタの格好をした強盗がやってきた。
 なんで俺が三段オチの担当なんだ。
 来年はせめて呪いが三割減ぐらいであってほしい。

 その4

「……クリスマス? だからなに?」
「デートしよう!」
「嫌よ、寒いもの」
 帰り道に誘ってみたら彼女の態度の方も冷たかった。冬だなぁ。まぁ年中冷えているけど。
「そっかー」
「そうよ」
「じゃあ屋内で遊ぼう」
 発想を少し変えてみた。寒がりらしく、もこもこに服を着ている彼女が面倒そうに身体を動かしてきろりと俺の方を見る。
「あ、帽子似合ってるよね」
「……私に発言させなさい」
 帽子の位置を弄りながら彼女が睨むので、「はい」と素直に黙った。
「屋内と言うけど、そこに行くまでが寒いじゃない」
「ふーん、そうかぁ」
 彼女はとことん冬が苦手らしい。でも大学にはちゃんと出てきて講義には参加するから偉いなぁ。俺の大学に通う目的は彼女に会うためなので、その真面目さにとても助けられている。

 明日はクリスマスなので誘ってみているけど、彼女は乗り気じゃないようだ。俺と彼女の間には微妙な温度差があるみたいだ。