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 その1


「大変だー」と今時そんな風に叫んでやってくるやつなんているのかよと思っていたら俺の部屋にやってきたので、なんだと身構えたら確かに変わったことにはなっていた。
 部屋に入ってきたエリオが縮んでいた。小学校の低学年か、幼稚園児級に。
 こぢんまりとしたエリオが俺の側までやってきて、「うぉー」と驚く。
「イトコが大きく見える」
「今のお前からすると実際、大きいんじゃないかな」
 存在感で大きく見えているわけではない。エリオがばたばたと手を振って説明してくる。
「起きたら小さくなってた」
「それはそれは」
 よくありそうな話だ。いやまぁ、ないか。
 むむむ、とエリオが急に閃いたように目を細めた。
「イトコがわたしのかっこよさを妬んで呪いをかけたかのーせーがあるな……」
「ないから安心しろ」
 呪いもなけりゃあかっこよさもない。その小さな膝小僧には愛らしさしかなかった。
「まぁ心配するな。こういうのは大抵、明日になったら治るから」
 それがお約束というものだ。
 などと言っていたら寝起きの女々たん(40)がやってきた。ほげーと緩んだ口もとがだらしない。どういう寝方をすれば顔中に枕の跡がつくのだろう。髪の毛が太陽の塔みたいになっていた。その女々たん(40)の濁った瞳がエリオを捉えた途端、ぎらりと光を灯す。目玉に電球でも仕込んでいるのだろうか。
「まぁまぁまぁこれはどういうこと」
 などと言いながらも抱っこして、「ぎゅー」「きゅー」抱きしめて若干嬉しそうである。小さいエリオは飲みこまれるようにされるがままだった。
「エリちゃんったらちっちゃくなったわねー。栗とか亀の妖怪にぶつかったのかしら」
「あれって妖怪だったんですか」
 じゃあなんだと聞かれると説明しようがない。ああいう生き物だと思うしかなかった。
「おかーさん、たすけてー」
「任せなさい、今日は一緒に寝ましょうねー。お風呂も入りましょうねー」
 言いながらエリオの頬に吸いつく。ちゅーっと吸ってから、「昔を思い出すわね」と優しさを含んだ口もとで呟く。思い出まで吸ってないか、と少し疑う。
女々たん(40)がエリオを一旦下ろす。それからすすっと、扉の裏側に身を隠す。だから足を動かさずに横滑りするなよ。
 そして次に出てくると当然のように背が縮んでいた。
「やーん、女々たんもちっちゃくなっちゅったー」
「ふーん、へー」
 ぺったぺったと走ってくる。なんとなくやりそうだと思っていたのでさして驚かない。
「おかーさんとおそろいー」
 エリオが喜ぶ。……喜ぶところか?
「どうやってやったの?」
「エリちゃんが大人になったら分かるわよー」
 分かるはずがないと思う。
「さて戻るか」と、女々たん(40)がにょきっと元の身長まで生えて去って行った。怖い。地球の科学とか法則がまったく適用されていない。最近、まったく自重しなくなったな。
「とあー」
 その人のご息女が両手を上げて飛び跳ねている。
「なにしてんの」
「おかーさんみたいに伸びないかと」
「無理」
 治る様子もないので、放っておくことにした。
 で、暫く経った後。