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『今日の安達さん』


 町中を歩いていて、しまむらという名前を見るだけでびくっとなる。
 立ち止まって見つめて入ってみようか悩む。
 金物屋に入ってどうするのだ、と冷静になるのに結構な時間が必要だった。


『今日のしまむらさん』


 ふと思い立って、宝くじが当たったらなにを買いたいかとメールで安達に聞いてみた。
『しま』とだけ書かれた返信がすぐに届く。しま、島? 島かぁ豪儀だなぁと妙な関心を覚えていると、すぐに二通目が来た。
『間違えたごめん間違えたすまそん』
 安達のメールは打ち間違いが多いから、クイズみたいで少し楽しい。


 だけだと少ないのでおまけ『もしみんな小さかったら』


 色々な子がいるものだった。みんな同じような背丈でもその個性が色あせることはなく、一目で区別がつく。総じて子供はかわいらしいもので、だから庇護したくなって、弱い存在が強くなるまで守られていく。生命って上手くできているものだなぁと、変な感心をしてしまった。
 しかし私が子供だった時代より、ずっと個性的になったものだ。
 向こうには水色の髪の女の子までいる。一緒に遊んでいる子はいつも帽子をかぶっている。色々だ。いや色々なんて一言で語っていいのかしら、あの髪の色。
「しまちゃん、まってー」
 自由時間に廊下と教室を行ったり来たりと忙しない子たちがいる。年長さんの中で一番騒がしい……もとい元気なしまちゃんと、その背中をいつも追いかけているたるちゃんだ。
 しまちゃんは両手を前に突き出すようにしながらぺったぺったと走っている。相変わらず変わった走り方だ。でも見ていて不思議に和む。たるちゃんは両手を万歳みたいにあげてしまちゃんにくっついていく。こっちはこっちで変わっていた。でもこちらもかわいい。
 どちらも元気いっぱいで見ていて気持ちはいいけど反面、危なっかしい場面も多くて気が休まらない。特にしまちゃんは無鉄砲で、周りのお友達に壁を作らないのはいいけど建物の壁はちゃんと意識してほしい。なぜ手を前に出す走り方でよく額をぶつけているのか。
 その二人が教室の真ん中を走り抜ける。そして、それを眺めるのは私だけではない。
 他の子をあやしながらそちらに目をやると、やっぱり、一人で大人しく座っていた。
 粘土を弄りながら、先頭を走るしまちゃんをジッと目で追っている。
 今年の年長さんで一番の問題児は多分、あの桜ちゃんだ。他の子に乱暴するわけでもないし迷惑もかけないのだけど、そういう方向とは異なって手強い。無口で、反応も薄く周囲とのコミュニケーションに難がある。あの子のお母さんとも話したことがあるけれど、家でも大体同じらしい。分かりづらい子です、とお母さんが苦笑していた。そうだろうか、と思ったけれどその場では反論しなかった。
 確かに一見するとそうだけど、この教室にいる間の桜ちゃんは案外分かりやすい。桜ちゃんは特別仲良しな子が一人もいないけれど、そんなのお構いなしに話しかけてくるしまちゃんには関心を持っているみたいだった。でも、自分から声をかけようとはしない。
 しまちゃんと一緒に遊びたいのに、いつも自分からは言い出せない。側まで来て一人で遊んで、気づいて欲しそうにしている。恥ずかしがり屋というより、どう話しかければいいのかが分かっていないみたいだった。特に、しまちゃんの周りに友達がいるときは一層、引っ込む。
 そんな桜ちゃんと対照的に、教室の隅で賑やかに遊んでいるのはあきらちゃんとたえちゃん。なんかだっこしていた。
「ぐぬぬ」