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 機体を前進させると、所々で違和感のある音が混じる。関節を擦るようなそれが、内部に入り込んだ土だと途中で理解する。大穴に落下してからメンテナンスする時間も取れていないみたいだ。損傷した装甲は換えの利くものが手に入らないと言うし、日に日にスーパーロボットのメッキが剥げていくようだ。右翼に搭載されていた大砲は取り外されている。どうも無理が祟って故障したらしい。
 そんなのばかりだ。ハッチも緩んで、時々ガタついている。
「こき使われているなぁ。お前も、私も」
 異質なるものしか感じてこなかったロボットに、少々の親近感を抱く。
 或いはそれは、私を侵食する青い光の意思なのかもしれなかった。
 そんな機体で、私は今、砂漠をどんどこ走っている。置く位置を誤ると足を砂に取られて機体がよろめく。砂漠での操縦練習なんてものはなかったので、苦戦してはその衝撃に身体を痛める。飛んでいけばいいのだけど、練習も兼ねているつもりだった。
 ここに定住するなら、砂漠での活動の機会も増える。ムダにはならないと思った。
 指定された発掘現場に向かう途中、大きな岩によってできた影の下に作業員たちの仮住まいが見える。更にその向こう、岩原を越えた先には旧世代の民家らしき屋根が見えた。
 入り口も埋没して屋根という頭だけを残した、過去の墓だ。この地域は過去に緑地で、人間の生活圏として機能していたけれど近隣の砂に呑まれる形で破棄された、と習った。もう何百年と昔の話だ。けれど怪獣によって本当に人間が辺りから減っていった結果、緑はいつか回復していくという見通しがある。人間は、他方に迷惑をかけて生きていることが最たる特徴であるように思えてならない。
 作業用の機械が見えてきて、機体をそちらへ誘導する。私の仕事は発掘ではなく、その作業の障害となるものの排除だった。この依頼自体にも一応の支払いはあるらしく、町長さんから80ジュドルが給付されるらしい。だからわかんねーよどこの国の単位だよ。この町でしか使えないお金なのかと思って少し見て回ったら、普通のお金でやり取りしていた。分からん。
 砂場の山に足を取られないよう飛び跳ねて近寄ると、開いた穴から離れて作業員の一人がこちらに大きく手を振ってくる。距離を取って停止した後、ハッチを開けて先端に出た。
「おぅおぅ、すげーカラーリングだなー」
 手で目の上にひさしを作りながら、作業員が快活に話しかけてくる。
「どうも、お世話になりますー」
 案外離れているので、声を少し張り上げないといけない。しかし、コクピットの外は暑い。
 衝撃という視点からすると乗り心地は最低の部類に入るカァールディスだけど、冷房だけは設置されていていやに効くようになっていた。機械のチョコが乗る前提だからだろうか。でもオンオフのスイッチしかなくて、温度調整なんてものは存在しない。この大ざっぱなところは、いかにもあの博士の考案した仕様という印象だ。
「話には聞いていたけど若いなー。その歳で免許持ってんのかい?」
 和やかな挨拶の中で痛いところを突かれる。
「仮免ですー」
 取得する前に学校ぶっ壊れました、とまでは説明しなかった。
 あの話はもう、こちらの町にも伝わっているのだろうか。
「ほー。ま、町長さんの紹介だからな。頼りにしていいんだな?」
「ロボットの方はー」
 世界で一番頑丈な棺桶であることは保証する。
 私の答えに満足したのか、作業員が現場に戻っていく。こちらも強い日差しの下から離れてコックピットに逃げ込んだ。吹き出す涼やかな冷気を受けて、首筋が氷水で固まるようだった。
 作業員に続いて現場入りする。発掘現場には穴が点在して広がっていた。深いものではなく、砂を掻き分けて掘り返しているという様子だ。そこまで深くない位置に目当てのコンテナ類や旧世代の遺物が眠っているみたいだった。それも、おかしな話なのだけど。
 遠くに埋没する家屋の屋根と合わせると、墓荒らしのようにも見えた。
 操作する機械が、杭のように細長い物体を地面に埋めていく。あれを地面下へと突き刺して、金属と接触があったら掘り返す、というのが作業の基本らしかった。