WEB小説 入間人間のウェブ限定小説が読めます。

PAGE1



『その1』

「今回はヤシロ様サンタが来てやったぞ」
「ほぅ」
 二階から降りてきたヤシロが腰に手を当ててえへんえへんと胸を張る。
 こたつに入ったまま振り向いて、「ん?」と首を傾げた。
「サンタはいいがその格好はなんだ」
「む?」
 トナカイの皮膚、もとい服の腹部分をヤシロが引っ張る。
 今日はパンダじゃなくてトナカイパジャマのご登場である。
 反応から見るにどうも勘違いしているようだ。
「サンタはこっちの人ね」
 適当に雑誌に載っていた具体例を指差す。ソリ引く方じゃなくて、乗る方。
「おおこっちか」
 ヤシロがほぅほぅと頷く。今まで気づいてなかったのか。
 トナカイの格好だから当然、サンタの一番大事なプレゼント袋も担いでいない。
 いつものただ飯ぐらいそのままであった。
「ちょっと待っていろ」
 とててーとヤシロが廊下に走っていく。そしてすぐ戻ってくると、格好はそのままにヒゲだけふさーっと生やしてきた。ヒゲも髪同様に白銀だ。きらきらしているし、ふっさりしている。というか顎どころか顔の下半分を覆うように茂っているので、ヒゲというか髪の毛が下からも生えているようにしか見えない。
「どうだ」
「さらさらですね」
 触ってみる。長すぎてやはりヒゲというより髪の毛だ。まぁこれぐらいは瞬時に生えても驚かなくなっていた。うちにはもっと凄いのいるし。で、サラサラヒゲのヤシロがうろうろする。ヒゲから真白い煌めきを放ちつつこたつの周りをぐるぐるする。
「なにしてんだサンタ」
「小さいのはどこ行った」
「娘なら台所にみかん取りに行ったよ」
 丁度足音が聞こえるので戻ってきたようだ。うるさいのと一緒に。
 ちなみにエリちゃんは今、その台所でカレーを作っている。うちのクリスマスは毎年カレーだ。娘が肉を好まないので野菜中心のカレーだけど。
「あ、ヤチートナカイだー」
 みかんを載せたお盆を持った娘がヤシロを見てにっこりする。
 その後ろには「キャキャッキュ」と奇声をあげる女々たん(50)がいた。
 娘の行くところには必ずついて回るのである。
「サンタだぞ」
「どこがー?」
「ほれほれ」
 ヤシロがヒゲを主張する。横から見ると顔がほとんど埋まって毛玉である。
 教育番組のマスコットキャラクターにこんなのいた気がする。
「うそだー。ヤチーはほんもののサンタさんじゃありませーん」
「なにをぅ」
「じゃーねー、わたしのほしーものあててみて」
 娘がヤシロを試すように言う。
「ほんとのサンタさんにはおてがみかいたもん」
「むむ。まてまて、今超能力で透視するから」
「ねー」
 娘がこっちに笑顔を向けてくる。なんと可愛らしい。