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 仕事帰りに町をぶらぶらと歩いていたら、妙な上に小さいやつに絡まれた。なにが妙って、髪の色が白……いや銀色だ。銀色と言っても灰がかったのとは違い、正に白銀といった清い色合いだ。
雪の色に似ているかもしれない。しかし比較しようにも今は6月なので、身近に雪などない。
「お前はちょっと不思議な感じがするぞ」
「……そうか?」
 膝に手を付いて、目線をやや下げながら相手する。町中で目立つなぁこの色は。
 しかもなぜかパンダのパジャマだし。
「その顔の右側、融合しているな」
 お、と思った。同時にちょっと警戒もした。確かに俺の顔は右側が少し変わっている。光の下で確かめると、やや灰色に近いのだ。そこまではいい、それを融合とか言い出すのは怪しい。
「何者だ?」
 まさか、こいつも宇宙人だろうか。言われてみればああなるほどみたいな外見ではある。
 光っていれば大体宇宙人だ。
「くっくっく」
 思わせぶりだ……。
「む?」
 あれ、あれときょろきょろしている。
「あいつらはどこへ行った」
「え、ただの迷子?」
 むぅ、と銀色の少女が唇を尖らせる。こっちも困る。
「ぴこーんぴこーんぴこーん」
「うわ、なんだそれ」
 髪の毛の一部が急に立って左右にぴこぴこ動く。そして、直角に曲がって明後日の方向を指し示した。突風で髪が煽られたわけではない。
とりあえずただの迷子ではない。おかしな子供であるのは疑いようがない。
「こっちだな。ではサ ラ バ ダ」
 最後だけなぜか古臭い宇宙人風に喋って、髪の毛の指した方向へてってってと走り去っていく。なんだったんだ、と仕事を終えて疲労が溜まっているところに、頭にずしんと来る相手だ。
 まぁ、俺が出会ったやつと比べたら、そこそこ普通なのかもしれない。
「おかしなのがいるもんだな。……なぁ?」
 未だ右目の奥から消えることのない、エイリアンの背中に同意を求める。
 もちろん、いつものようにそいつは応えない。
 でも決して消えないから、俺はたまに空を見上げてしまうのだった。


「好きな数字はありますか?」
 易者にそう聞かれて、少し考えて「11」と答えた。
「ほほぅ、なぜです?」
 机の上の水晶玉を覗けば、それくらい見通せないものだろうか。
「人が並んで立っているように見えるから」
「なるほど支え合い。あなたは優しい人ですね」
「支える……なんか違わない? そうじゃなくてさー、君と一緒に並んで歩くというかね?」
「はい二千円」
 そんなバカな。
 駅前で物珍しいからと易者にかかってみたら、好奇心の代償は高くついた。
 それから、目的もなく大通りの方に出てみる。
 建物の隙間から出たところで帽子が風に煽られて、待て待てと掴んだら「ありゃ?」衣替えしていた。
「こりゃ赤い」
 手に取った、よれよれの帽子は赤い。ツバも含めて真っ赤だ。なんだこれ。ていうか俺の帽子と振り向くと、路上をこてんこてんと転がっていた。引き返して、車道に出る前に自分の帽子を拾いあげる。
 軽く手で払ってから、頭に戻す。さて元通りになって、でも手元にはもう一つの帽子。
 真っ赤な魔女の帽子。
 ポケットに入れて叩いてねぇぞ、とくるくる回していたら、足音がして振り向く。
 スーツ姿のご婦人が走ってきていた。視線から察するに、帽子の持ち主のようだ。
「えぇー……にあわねぇ」
 俺が言うのもなんだけど。帽子を前に出すと、そうそうとばかりに頷く。
 ご婦人は長く黒い髪に目が行きやすい、なかなかの美人であった。
「拾ってくれて、どうも」
「いえいえ」
 赤い帽子を返すと、ご婦人はすぐに頭に載せた。やっぱ町中でも被るんだ、と凝視する。
「……なにか?」
 赤い帽子が注目されるのは面白くないのか、少し声が固い。
「いい趣味だと感心する」
 ほらほら、とこっちの青い帽子のツバを摘む。しかしご婦人は目を冷たく細めるばかりだ。
「どこが? 最悪よ」
「あれぇ?」
 せっかく同好の士に巡り会えたと思ったら、この態度である。