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「冗談みたいな性格だなてめーって三人に一人は言うね」
「冗談なら笑える性格になりなさいよ……」
 安達ちゃん母は宣言通り、さっぱり笑わない。この辺は娘と同じだ。
「桜は、あなたの家によく行ってるのね」
「うん? そうね、結構見るわ」
 高校生になってから遊びに来るのは安達ちゃんくらいだ。
 昔は樽見ちゃんもよく遊びに来たんだけど、いつの間にか姿を見なくなった。
 友達といると楽しいのに、ずっといられないのが不思議であり世の流れであり、少し面白い。
「そう」
 安達ちゃん母が言葉を引っ込めるように短く終わらせてしまう。
「えー? 他になんか聞いてみなさいよ」
 二の腕を叩いたり摘んだりしたら、「うぜー」と包み隠さず評価された。
「あの子のことは……よく分かんないのよ。考えていることも、感じていることも」
「……? 分かんないなら本人に聞いてみればいいじゃん」
 私なんて聞いてもいないお気持ちを伝えたりもするぞ。多分その辺がウザがられている。
 分かっているけど、取りあえず言ってしまう性分なのだ。
 安達ちゃん母はなにが意外だったのか、目を丸くしている。
「どしたん?」
「……んーん、別に」
 安達ちゃん母がそっぽを向くように、体の向きを変える。
「私はサウナ行くけど」
「バイバーイ」
 あんな熱いとこ嫌じゃい。
 小さく手を振ると「なにこの人」とはっきり言いながらも、少しだけ笑った。
 それから。
「赤華よ」
「島村良香でーす」
 名乗り合って別れた。名前を次回まで覚えていられる自信はない。
 まぁ安達ちゃん母でいいか。
「意外と縁があるものね」
 ジムに長年通っているけど、知らないことはまだ多い。
 帰ったら、うちの抱月に話してやろうと思った。


 二章『AKIRA』


「お前は大して重要ではない」
 ほーん、と最初に聞いたときは思った。中学一年の時だった。
「日野の家というものを残していくためには、という話だぞ」
「んーまぁ、分かる分かる」
 それくらいは家の形と、在り方と、自分を理解できる年齢にはなっていた。
「兄貴たちいっぱいいるしね」
 四人もいる。数えるだけで片手が塞がっちゃうのだ。
「うむ」
 向かい合って座る親父が短く頷く。親父は基本、口数が少ない。表情は割と変わるので、無口と噛み合っている感じがしない。そして正座している親父はそれ以上、語ろうとしない。
 こっちから話があったわけじゃないから、わたしも口を閉じたままになってしまう。
 風呂入ろうとしたところで捕まったので、色々と中途半端な気分だった。
「うむ」
 親父はもう一度頷いて、部屋を去った。そんだけかい、と胸中でぼやいて見送る。
「わっかんねー父親」
 色々考えているのは表に出して、そして伝えようとしないのも隠さない。
 さっさといなくなってくれたのは正直助かるけど。
広い和室に一人残されたわたしは、少し経ってからその場に寝転んだ。
 畳の匂いが背中から抜けてくる。目を瞑って、しばらく嗅いだ。
 やがて自分の呼吸に合わせて揺れる腹部を強く感じるようになってから、ぽつりと呟く。
「そんなこと言われてもな」
 困ってしまうのだった。


「まぁつまり、家にはあんまいなくてもいいわけだな」
 都合よく解釈してこたつに刺さっていると、向かい側の永藤から「えー」と不満のお声が返ってきた。
「あきらちゃんの家好きなのに」
「どこがー?」
「広い」
 広さを示すように永藤が大きく腕を伸ばす。縦に。うちは一階しかないぞ。
「普通、横だろそういうの」